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歯が痛い

歯が痛い


歯が痛いというテーマを挙げて、歯科医院に来院する理由の上位に入り込むとても身近な歯痛に迫ってみたいと思います。

 

 

歯が痛いとみなさんはどのような状態を想像しますか?

 

「虫歯かなあ‥。」と思っているのではないでしょうか。

 

そうですね、多くの方が『虫歯に違いない』という感覚を持ってしまいます。

 

 

 

 

 

 

その痛んでいる歯は、本当に虫歯なのでしょうか。

 

 

実は、歯が痛いのは虫歯に限らず、様々な理由があり得るのです。

 

 

 

今日はこの歯痛に対して、「患者目線と歯科医師目線の違い」というサブテーマを持ちながら患者さまの痛みに対するイメージと歯科医師の客観的な診断の乖離についてお話しします

 

 

 

 

 

 

このブログは患者さまの些細な一言がきっかけで書いてみようと思いました。

 

 

 

 

「痛いから近くの歯医者に行ったんだけど、虫歯ではないと言われて信用できないからこちらに来院しました。」

 

 

歯科医師の先生はきっと「あるある」と思いながら見て下さっているのではないでしょうか。

 

 

そして、読んでくださっている患者さまもまた「私も同じことを考えていた」と思っているのではないでしょうか。

 

 

 

 

そうです。ここには「患者さまの歯の痛みに対するイメージ」と「歯科医師の検査と診断」の乖離から生まれる「あるある」が存在します。

 

 

もちろんどちらかが嘘を言っているというわけではなく、この乖離は「歯に対する心配や不安感」と「説明不足、コミュニケーション不足」から生じているのです。

 

 

この2つがしっかりとクリアになっていないと、患者さまは不安になってしまい、何件も歯科医院を周ることことになったり、必要のない歯を削ることになったりするのです。

 

患者さまにも、歯科医師にも損をすることが増えてしまい、信頼関係が崩れてしまうとお互いに良いことがありません。

 

 

さて、まずはその歯に対する心配や不安感を払拭すべく、歯の構造とメカニズムからゆっくりと理解してみましょう。人は知らないことや見えないことにとても不安を覚えてしまうものです。

 

 

■歯の構造

 

 

 

歯は単調な白い塊というわけではありません。体の成長とともに歯もそれぞれの役割を果たすために分化していきます。

 

◆エナメル質

一番外側の白く見えている部分はエナメル質といいます。咀嚼の力に耐えるために硬くて緻密な構造をしています。99%は無機質で出来ており、生きた細胞はいないので虫歯になると再生されません。一度失うと元には戻れないので、予防がとても大切になります。

 

◆象牙質

エナメル質より深部には象牙質があります。象牙質は70%が無機質、30%はコラーゲンで出来ている組織です。エナメル質と比較して柔軟性があるので、歯の深部へと衝撃がかかることを軽減する働きがあります。

 

後述しますが、象牙質には象牙細管という1~2μmの無数の細い管が多く存在します。これは歯髄からエナメル質にかけて放射状に存在しており、象牙質の形成と維持を担っています。

 

この象牙細管が今回の「歯の痛み」へのキーワードになります。

 

象牙細管は象牙質の外部の刺激を内部(歯髄)へと伝える特徴があります。

 

象牙細管を通して冷たいものや歯ブラシの摩擦、そして齲窩(虫歯の穴)への刺激などが歯髄へと伝わることで人は鋭い痛みや凍みを感じているのです。

 

 

◆歯髄

歯髄には神経や血管が配置されています。歯の内部にも実は血が通っているのです。これにより歯の水分量が保たれているので、象牙質の柔軟性や硬さが維持できています。

 

また、知覚を司る神経にもいくつかの種類があり、ズキッと鋭く凍みる神経やズーンと重く痛む神経、圧力を感じる神経などがあり、歯髄にはズキッと鋭く凍みる神経とズーンと重く痛む神経が存在します。

 

ズキッと凍みる神経は上図の赤い部分に多く配置されています。そこに刺激が伝わると人は痛みを感じてしまうのです。

 

 

◆歯根膜

歯と骨は直接結合しているのではなく、歯根膜という血管や神経が通るクッションのような0.3mmほどの組織によって繋がっています。

この歯根膜の働きにより、歯はわずかに浮き沈みをすることが可能になり、衝撃を骨に直接伝えることなく、多くの歯で噛むことが出来る様になるのです。

外傷を受けた際や噛み合わせの不調和があると、歯根膜に損傷が起こり痛みを感じます。

 

 

 

歯や歯の周りの構造はこのようなものとなります。

 

 

それでは、実際に歯が痛むのはどんな時なのか深掘りしてみましょう。

 

■歯が痛む6条件

1.深い虫歯
2.根の病気(根尖性歯周炎)
3.噛み合わせの不調和
4.歯肉の退縮に伴う知覚過敏
5.外傷に伴う知覚過敏
6.歯の破折

 

 

 

1.深い虫歯

深い虫歯があると、エナメル質が崩壊するので細菌や食べかすが容易に歯の内部に侵入します。そうすると、咬合の度に象牙細管を通して歯髄へと刺激が伝わり、ズキッという歯の痛みがでます。

 

ここでのポイントはエナメル質が崩壊した深い虫歯という点です。

 

実はエナメル質に限局されるような小さな虫歯の場合は、ほとんどの場合が痛みを伴いません。

 

 

実際に例を挙げてみましょう。

 

・浅い虫歯

エナメル質に限局される虫歯は、とても繊細な方でない限りは多くの場合が痛みを伴いません。もちろん浅い虫歯でも視認することは可能です。小さな虫歯も見落とさない診断力は言うまでもなく必要となります。

 

 

 

 

 

 

・深い虫歯

エナメル質が崩壊するような深い虫歯では、噛むたびに歯髄へと刺激が伝わって痛みを伴います。象牙質に到達する虫歯はレントゲンにもしっかりと写ることが多いので、虫歯の鑑別にはレントゲン撮影が有効となります。

痛みを伴う深在性の虫歯の場合はすぐに治療が必要です。

深在性の虫歯を放置すると歯髄炎になることがあります。歯髄炎になると数時間強い痛みを自覚するようになり、夜も痛くて眠ることが出来ないようになることもあります。

 

 

■歯が痛む6条件

2.根の病気(根尖性歯周炎)

細菌が歯の内部で増殖して深部へと侵入し、根っこの先で炎症反応を起こしていることを根尖性歯周炎といいます。深在性の虫歯を放置した場合や一度歯の根っこの治療をした歯においてよく起こります。

 

慢性時には噛むときに鈍い痛みや違和感を感じることが多く、急性症状が起きると歯茎が大きく腫れてしまい、噛むことも出来ないようになることもあります。これは細かい意味で言うと、歯が痛むのではなく、歯の周りが痛むという表現が正確です。

 

この根尖性歯周炎を放置すると、さらに炎症は深部へと波及することがあります。

骨に波及すると骨髄炎という病気になりますし、上顎洞へと波及すると上顎洞炎を引き起こします。蜂窩織炎や敗血症なども関連として考えられ、命を脅かす病気へと発展する可能性もあります。やはり早期の治療が必要です。

 

 

■歯が痛む6条件

3.噛み合わせの不調和

 

人の噛み合わせというものは非常に曖昧で、長い時間の中で歯がすり減ったり、歯が移動したりします。

 

経年的な変化の中で身体は順応していき、痛みを伴うことなく毎日咀嚼をすることができます。このように理想的な噛み合わせではなくても日常を送ることができる咬合のことを生理的咬合といいます。

 

しかしながら、過度に負荷がかかる歯には痛みが伴う場合や歯がズキッと痛む場合があります。これを咬合の不調和といい、改善が必要になります。噛み合わせの不調和があると、顎関節症が生じることやや頭痛がするようになる方もいます。

 

お口を大きく開けて、ゆっくりと閉じてみてください。あなたの傷んでいる歯が最初にゴツンと当たってきませんか?このようにどこかの歯が最初にゴツンと当たる歯のことを早期接触といい、このような歯では歯髄へと過度な刺激が伝わってしまうので痛みやズキッと痛む症状がでてしまいます。

 

 

また、セラミックなどで虫歯治療をした後にズキッとした痛みを感じる方もいます。これには複合的な事象が重なっている場合が考えられます。

 

 

元々、深い虫歯の治療をしているのであれば、治療の切削器具の刺激が原因で歯髄が過敏になっている可能性もありますし、装着したセラミックがしっかりと接着していない場合に隙間から刺激が伝わることで歯髄が過敏になっている場合もあります。また、セットしたセラミックの噛み合わせが少し高いと咬合の不調和を起こしてズキッと痛むこともあります。

 

 

噛み合わせの不調和による歯の痛みは重篤になると日常の咀嚼が苦痛になる程に痛むようになる場合もあります。

 

思い当たることがあれば、早めに歯科医師にご相談下さい。

 

 

 

 

■歯が痛む6条件

4.歯肉の退縮に伴う知覚過敏

 

歯周病とは歯周病菌に感染することで骨が喪失される疾患です。骨の喪失に伴って歯茎が退縮して歯の根っこが露出することがあります。歯の根っこはエナメル質に保護されていないので、象牙細管に沿って歯髄に刺激が伝わりズキッと痛むことがあります。

 

一度喪失した骨や歯肉は再生量が限られてしまいます。限られた組織が感染によって喪失することを避けるために歯周病の予防治療を推奨しています。

 

・治療法

歯肉の退縮に伴う知覚過敏には薬剤を塗布することで疼痛が軽減する場合があります。また、レーザーによって象牙細管を塞栓する方法やレジン充填という方法もあります。

 

条件は限られますが、歯肉を移植することで根っこを被覆する方法もございます。

 

 

 

■歯が痛む6条件

5.外傷に伴う知覚過敏

 

外傷により強い衝撃を受けた後の歯は知覚が過敏になりやすく、ズキッと痛むことがあります。

 

歯髄の鎮静には長い時間がかかる場合もあり、数日から数ヶ月の間は注意深く経過をみることが肝要になります。このように強い衝撃を受けた歯は血流が途絶える場合もあり、歯髄が壊死する可能性もあるので、受傷から数ヶ月後にはレントゲン撮影を行なって経過を見た方が良いかもしれません。

 

 

■歯が痛む6条件

6.歯の破折

 

歯に過度な負担がかかるとヒビが入って破折することがあります。歯が破折すると、細菌が深部まで到達することが出来るようになるので歯茎が腫れることがあります。また、噛むと痛みを伴うようになります。これは歯が痛むというより、歯の周りの組織が損傷を受けて傷んでいるということになります。

 

神経を取った経験がある歯は破折するリスクが高く、深部に及ぶ破折が認められた場合は歯を抜く必要性が生じます。特に歯ぎしりをする方は睡眠時に歯に大きな負担がかかるので破折リスクが大きくなります。近年ではボトックスを筋に注入することで歯にかかる負担を減らす対処法も注目が集まっております。

 

破折した歯も抜かずに残す方法や、インプラントやブリッジでの対応が必要になります。また、親知らずを欠損部に移植する方法もあるのでご興味がある方は併せてご覧ください。

 

 

いかがでしょうか

以上が歯が痛む6条件になります。

 

 

みなさまに当てはまることがあるのではないでしょうか。

 

本日のブログは普段の臨床を行なっていくにあたって、患者さまの何気ない言葉から我々歯科医師と患者さまの「歯の痛み」に対する目の向け方が違うことに需要を感じて投稿をしております。

 

 

歯のズキッとする痛みには様々な種類があり、決して虫歯だけではないということ。そして、それぞれに適切な対応を取ることが問題を解決する方法であるということが少しでも伝われば嬉しく思います。

 

 

デンタルクリニック麻布仙台坂

井之前貴雄

 

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