〒106-0047 東京都港区南麻布1丁目3−7
プレール麻布仙台坂 1階
歯医者さんに「根管治療が必要ですね、根の病気になっています。それでは始めます。」と言われて治療がスタートしたものの根管治療の具体的な内容をしっかりと理解されている方は少ないのではないでしょうか。
なぜ根管治療が必要なのか、根の病気とは何なのか、リスクはあるのか、費用はどうなのかなど不安なことは沢山あると思います。本日は根管治療の流れについて分かりやすく説明します。
虫歯の菌やその他の細菌は歯の内部へ侵入して歯を内部から崩壊させたり、根の深部で炎症反応を引き起こして歯茎が腫れたり痛みを引き起こしたりします。これを根尖性歯周炎といいます。いわゆる根の病気です。
根管治療は歯の内部の細菌感染を取り除く治療です。根尖性歯周炎は歯科では日常的に取り扱う疾患であり、多くの患者様が悩んでいます。
・歯茎が腫れる
⇨歯の内部に侵入した細菌は根の先端で炎症反応を引き起こします。急性の炎症が起きた場合は周りの方が驚くほどに歯茎が腫れることがあります。
歯科医院に来院して歯茎に切開をして膿を可及的に取り除くこともあります。
・噛むと違和感がある
⇨根尖性歯周炎は根の先端で炎症反応を起こしているので、噛む力が歯に加わると炎症を起こしている部位に負荷がかかるので違和感や痛みが生じます。
急性の炎症が起きている場合は歯に何かが触れるだけで強い痛みを生じることがあります。
・歯が脆くなる
⇨歯の内部に細菌が長期停滞することで歯の内部では虫歯が進行します。脆くなった歯に噛む力がかかり続けると、ある日突然歯が折れてしまい抜歯が必要になることがあります。
歯が縦に折れてしまった場合は感染がどんどん進んでいくので制御不能となり、歯科治療では救うことが出来なくなり、抜歯以外の選択肢がなくなってしまいます。
1.診断
レントゲンを撮影してどの歯が感染しているのかを把握します。感染している歯の根本の骨は炎症反応によって溶けて黒く映っています。黒い部分には膿が溜まっていることもあります。
より正確な炎症の波及状況を確認するためにCTを提案することがあります。CTを撮影すると、歯の三次元的な形を把握できるので治療の難易度を理解することが出来ます。
また、上の歯の場合は根尖性歯周炎が波及して上顎洞炎を起こしている場合もあるのでCTを撮影することは有効です。
それぞれの歯をコンコンと叩く打診という検査も有効です。炎症が起きている歯では打診をすると違和感を感じたり、痛みを感じたりします。誤診をしないためにも打診をすることは大切なことです。
2.被せ物や詰め物の除去
虫歯を長期で放置した場合も根管治療が必要になる場合もありますが、根尖性歯周炎は多くの場合で詰め物や被せ物をつけた治療履歴があるものです。
被せ物は外さずに治療してほしいと要望があることもありますが、被せ物をしたまま治療してしまうと、感染部位を見逃す可能性があるので被せ物は外すことを推奨します。
3.感染の除去
虫歯の染め出しの薬を使いながら歯の内部に出来た虫歯を徹底的に除去します。また、古い治療の材料も取り除いて綺麗にします。
ファイルと呼ばれる金属製の細いヤスリを使用しながら歯の壁についている菌を除去します。また水酸化ナトリウム水溶液も有効です。薬の力を使いながら地道に手作業で感染を取り除きます。
当院ではNi-Tiロータリーファイルという自動の感染除去ツールを使用しています。Ni-Tiはとても柔らかい金属であるので歯を傷付けにくい性質があります。
また、感染した組織を外部に掻き出す機能がついているので治療後の痛みが非常に少ないと好評です。
4.根管充填
歯の内部の感染を除去出来たら再感染を引き起こさなにように根管内部を充填する必要があります。緊密で細菌の再侵入を防ぐ材料が推奨されます。
当院ではMTAセメントを使用して全ての根管を充填します(自由診療)。MTAセメントは高い抗菌作用があり、目では見えない部分に隠れた細菌に有効です。そして高い緊密性があり、細菌の再侵入を許しません。また、炎症によって失われた根尖の骨を再生することを促す効果もあります。
MTAセメントの効果はそれだけではありません。MTAセメントを使用することで歯の強度が増すことは文献上でも明らかになっています。
それでいて生体親和性が非常に高く、体に為害作用がほとんど報告されたことがありません。MTAセメントは多くの研究、文献から裏付けられた非常に信頼性の高い材料であり、根管治療には必須の材料と認識されています。
5.コア作製
根管充填が終了したら歯質が沢山残っている場合を除いて中間構造(コア)が必要になります。
ファイバーコアやメタルコアという素材があり、それぞれの物性によって被せ物の脱離のしやすさや破折の起こりやすさが変わります。歯科医師と相談してどの素材が適切であるかを相談しましょう。
6.被せ物の装着
被せ物を装着することで根管治療をした歯はもう一度噛むことが可能になります。ただし、歯髄が残っている綺麗な歯と比較して8倍の破折リスクがあることは研究から明らかになっています。
菌が一度内部に入ってしまった歯は血液供給も途絶えているので大変脆い構造と変化しています。治療した歯を少しでも長く使えるように日々のブラッシングには気をつけましょう。
保険診療は標準的な治療方法です。厚生労働省の指針に則り材料の選択や治療法を選択します。逆を言うと、それ以外の良い機器や薬を使用したとしても料金は変わりません。
自由診療の根管治療は患者様の根尖性歯周炎を治癒させる為に有効であると考えられる物を医院ごとに選択して使用することが可能です。治療にかける時間も設備も費用も医院ごとに設定されます。
当院では自由診療の根管治療の際には一回の治療時間を90分設けています。菌は何度も薬を使うと薬のことを学習して効きにくくなります。一度で長い診療時間を設けることは菌が薬と触れ合う回数を減らす効果があります。また、一人の患者様にしっかりと丁寧に向き合う意図ももちろんあります。
しっかり時間を使って治療することは治療の精度にも当然関わってきます。平均的な根管治療の治癒率は40%と言われているのに対して当院では98%以上の治癒率(2024年時点)で日々の診療を行なっております。
設備面であれば、マイクロスコープが自由診療の大きな特徴ではないでしょうか。患者様が保険診療に比較して高額な診療をお支払いされることは我々としてはより充実した設備へと投資することに繋がります。
それはさらに患者様の満足度へと繋がる良いサイクルと考えています。質を考えた医院選びは必ずマイクロスコープを設置している医院にしましょう。
前述のMTAセメントや感染を防ぐラバーダムも自由診療の特徴です。当院の治療成績を押し上げているものはMTAセメントであると言っても過言ではないほどに信頼のおける材料です。
しかしながら非常に高価であるという側面もあります。保険診療は国が値段を決めてしまうので、良い治療をすればするほど赤字になってしまいます。医療人として安くて安心を広めたい気持ちもありますが、現時点の国の保健医療制度では限界があるのも現実です。
自由診療は高くて嫌だと感じる気持ちももちろん分かります。
ただし、その内側を覗いてみると、妥協を許さずに治癒に専念することが出来るという歯科医師として本当に喜ばしいものがあります。
そして患者様が負担して下さった治療費はより優秀な人材の確保や高精度の設備などに還元されます。そしてより良い医院へと繋がります。質と安心を大切にしたい患者様のために、今日も患者様と真摯に向き合っております。